2024年の9月下旬で82歳になってしまった。若い頃は、80歳を越えたら高齢者も良いところで、完全に隠居と思っていた。実際、81歳になったときに栄光学園の同期生から電子メールが来て、「18歳と81歳の違い」という別紙ファイルが付いていた。的をついた内容に思わず笑うと同時に年齢には逆らえないと痛感した。この種の文書はネットで検索すると色々なバージョンがある。日本人男性の平均寿命は、81.49歳と言うが、筆者の栄光学園同期約160名中45名、東大工学部物理工学科同期生22名中7名は物故しているので存命中は約7割となる。更に日本人男性の平均健康寿命は、72.68歳でしかない。そう思うと曲がりなりに活動出来ているのを有り難いと言わざるを得ない。
一方、82歳で頑張っているのは、アメリカのバイデン大統領である。彼には専用の飛行機、ヘリコプター、自動車があるのでどこにでも行けるが言動にはやや危ないところがある。
次期大統領選を辞退したのは尤もである。本当は、次期大統領に返り咲いたトランプ元大統領も来年の就任時が78歳なので任期4年が無事に過ごせるか気になる。特に昨今の緊迫し、想定外の事象が頻発する世界情勢、益々進歩する生成AIの時代に高齢大統領が最適解を出して行けるか甚だ疑問である。彼が最近任命している閣僚達はご本人を含めて危うい経歴が多いので尚更心配である。世界を巻き込む大事が起きないよう祈るしか無い。
中国の清華大学には、1957年にノーベル物理学賞を35歳で受賞し、82歳で28歳の大学院生と2004年に再婚して話題になったチェンニン・ヤン教授がいる。彼は現在102歳で健在である。筆者が清華大学駐在の東工大特任教授をしていた2015年に新清華学堂で開催された本格的なバレエ公演「ジゼル」でご夫妻が数列前に着席されているのをお見受けした。奥様は、清楚な美人で、ヤン教授が以前より若返ったように感じられた。こう考えてくると、もう80歳を越えると人様々と言うしかない。マイペースで無理をせずに社会貢献してゆくつもりである。彼に因んで82歳の老学者が28歳の美女と誕生日をバースデーケーキで祝う場面を生成AIに描いて貰ったら添付写真のようになった。とても楽しそうであるが、筆者は、もう付き合いきれない。
最近は物事の移り変わりが激しい。身近なところでは、2024年10月1日から東京工業大学が東京医科歯科大学と合併して東京科学大学となった。これにともない、筆者の東京工業大学名誉教授は、東京科学大学名誉教授になった。個人的には前者が好みであるが、大学に問い合わせた所、東京工業大学(現東京科学大学)名誉教授、東京科学大学(旧東京工業大学)名誉教授でも良いそうである。長たらしい名称は良くないし、新しく出来た東京科学大学を宣伝したいので東京科学大学名誉教授にした。実を言うと東工大在職中に大学大型化の流れが出て、東工大、東京医科歯科大、一橋大、東京外国語大、東京芸術大学の連携又は合併という案が検討された。筆者は推進派だったので東京科学大学誕生には喜んでいる。但し、名称にはやや疑問が残る。東工大も東京医科歯科大も実学優先で名を馳せていたのに何故「科学」になったのかである。新大学の英文名は、Institute of SCIENCE TOKYO(IST)である。以前は、Tokyo Institute of Technology(TIT)であった。略称は、TITであるが辞書で引くと「乳首、おっぱい、ばか、うすのろ」と出てくる。相沢益男学長(2001~2007年)がこの略称を嫌がり、TOKYO TECH ~ Pursuing Excellence としたこともあった。ISTは、辞書で引くとIndian Standard Time(インド標準時。日本より3時間半遅れ)とトヨタの車イスト(2002~2016年)が出てくる。イストは、今流行のSUVタイプ車の草分けである。筆者は、東北大学時代に乗って重宝していた。これならTITのような問題は無い。
もう少し一般的な話では、毎週運営委員会の皆様にコメントを付けて転送している向井会員の「樹脂関連情報と真田教授の東アジア情報」や、「理研島村博士のコロナ解析データ」を参照願いたい。宮本会員の「中国の自動車情報」も素晴らしく、日本のガラパゴス化が実感できる。
個人的にショックだったのは、10月17日に報じられた俳優の西田敏行氏の虚血性心疾患による急逝であった。未だ76歳という。彼が主演した「釣りバカ日誌」20作(1988~2007年)は傑作である。こういう映画が普及すれば世の中もっと過ごしやすくなるであろう。海外の007シリーズやランボーシリーズは面白いけれど暴力的で殺人をいとわない。これらを見て育った人たちが、ウクライナ戦争やイスラエル戦争で人権無視の大惨事と大虐殺を引き起こしているような気がしてならない。実際、プーチンが嵌まった映画は、007シリーズという。同じく4月21日に膵臓癌で亡くなったピアニストのフジコ・ヘミングさんも忘れられない。92歳なので致し方ないがリサイタルの予定があったとのことである。彼女の演奏は正に個性的で好き嫌いが激しいが、得意とされていたリストの「ラ・カンパネラ」などとても懐かしい。妻が料理をしながら彼女のCDをよくかけている。3月に82歳で亡くなったポリーニの完璧な演奏スタイルと正反対である。妻は、ポリーニのCDも良くかけている。気分に依ってかけ分けていると言う。
これから世の中どうなってゆくのか予測不能であるが身近に明るい話題もある。それは最近の東海道新幹線車両内のテロップに東レが、「ナノ構造制御で高性能・高機能材料を創出し社会に貢献」という文章を流し始めたことである。我々のナノ構造ポリマー研究協会の宣伝のように思えて嬉しくなる。又、11月11日に行われたブリヂストンの決算説明会で石橋Global CEOが、「免震ゴムは、「最高の品質で社会に貢献」という当社の使命のど真ん中の商品だ。免震ゴムのビジネスそのものは大きなものではないが、着実に進めていきたい。」とのこと。これも嬉しい話である。要は、我々は軸足をしっかりして活動して行けば良いと信じているこの頃である。