前回は仕事(研究)の評価に関して①研究の評価、②成果の評価、③人の評価の内容に関して記載した。完璧なものはできていないと思うが毎年管理職の人に対して人事考課の研修は必ず行っていて私も管理職になってからは受講していた。事前に数人の仕事の内容(架空のもの)を書面でいただき研修までに人事考課をし、当日は4-5人のグループで話し合って統一見解を提出するものである。その後各グループからの発表があり最後に参加者全員で良かった点、悪かった点を議論するというものであった。外部講師の方から適時コメントが頂けてこれは結構有益であった。
人を評価する際に以下の点が良く話題となった。①絶対評価と相対評価、自分との比較、②寛大化、ハロー効果、③中心化、④期末効果などである。①はどちらもメリット、デメリットがあるが相対評価では評価者自身との比較をすることは良くないということになった。自分ならこうするとかの話は本人のモチベーションに繋がらないという判断である。また相対評価は本人の更なる能力の開発にはなかなか結びつかないので絶対評価も必要と考えた。会社の方針に対してどの程度貢献しているかと言う指標である。②は人の評価に関係するが、絶対評価の場合は評価の分布を予定していないため寛大化傾向が表れやすい。つまり部下に不利なことはしたくない、部下から良い上司に思われたい、甘目につけておけば無難であろうなどという心理である。これは気持ちを切り替えて部下がかわいいからこそ足りない点をフィードバックし部下の成長につなげていく必要があると思う。ハロー効果とは一つでも良いことがあるとすべてを実態以上によく見てしまうとか何か一つ悪いと実態以上に悪く見てしまう事である。これも要注意である。③は特に相対評価の際に問題となるが、例えば5段階評価であればまずは3(中央値)につける傾向がある。よくわからないから3と評価してしまえば無難だろうと考えがちであるがこれでは本人の真の評価にはなっていない。④は評価対象期間のうち本来はその期間のうちすべての行動や結果について行うべきであるが、どうしても以前のことは忘れがちになり直近の結果だけで評価してしまいがちという事である。これの解決のためには本人の観察記録をこまめにつけておくことが必要だと思われる。
こんなことを色々と試行錯誤しながら毎年の行事として人事考課の研修を行っていた。余談であるが会社時代の研修として私が最も驚いたものは「謝罪会見」の研修である。役員になった際にいずれ臼杵は謝罪の機会があるかもしれない!?という事で行われた。化学実験室で爆発があり従業員が一人死亡したという設定である。私が責任者という事で事前に原稿を作成し当日は従業員全員が見守る講堂にて実施された。講師は元マスコミで記者をしていたという3人で私の説明の後に厳しい追及が行われた。ほとんど覚えていないが相当緊張したことは確かである。スーツは濃いグレーか紺、ワイシャツは白、ネクタイは赤や黄色は厳禁で濃紺にするなど細かいことまで指示された。最後に私は質問された際に手で洋服の裾やワイシャツの袖口を触ったり筆記用具をいじっていたそうで(全く覚えがない)、そのような行動はマスコミから突っ込まれるので絶対にしてはいけないなど言葉以外のことまで言われ本当に疲れた一日になった。幸い退職するまでそのような機会が無かったことは今更ながら良かったと思う。
話を戻すと研究の評価として単にその人を考課するという考え方ではなく、メンバーのベクトルをしっかり合わせて企業としての業績向上に繋ぐことが一番重要なことなので、その気持ちを忘れないように実施すれば最大限の効果が発揮できるものと信じている。このような評価の経験をさせていただいたことは今になって例えば賞などの選考委員やプロジェクトのメンバーの選考など様々な場面において役に立っていることは言うまでもない。
1 thought on “20250112 29-2.仕事の評価2”
コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。
メール拝見しています。これも貴重な体験ですね。外部講師による社内研修や「謝罪会見」研修など極めて重要と思います。
前回のコメントの続きですが、海外某大学の評価の仕方は、あれだけの資料に基づいて、
1.被評価者の学術研究挙動全体の評価
1)代表的な仕事の評価。
・学術的価値又は、経済・社会的利益に関して、高いか、比較的高いか、普通か、貧弱かの評価。
・アカデミックな考え方又は、イノベーションに関して、強力か、比較的強力か、普通か、貧弱かの評価。
・学術的研究手法に関して、強力か、比較的強力か、一般的か、貧弱かの評価。
2)研究方向の評価。
・最先端でパイオニア的か、最先端の追跡か、普通か、他のコメントがあるかで評価。
3)研究結果の評価。
・国際的に見て最先端か、国内的に見て先端か、普通か、他のコメントがあるかで評価。
4)国内外で見た同じ職業の人物と比較したアカデミックレベルは、トップクラスか、良好か、普通か、その他のコメントで評価。
5)被評価者のアカデミックレベルは当該分野で国際的に先端レベルに達しているか、否かで評価。
2.上記を総合して、採点して欲しい。
評点は、
・5.0~4.0:高いレベルで第一級の大学教授にふさわしい。
・4.0~3.0:平均レベルで第一級の大学教授に達している。
・3.0以下:第一級の大学教授のレベルに達していないので推薦できない。
3.被評価者に対して他にコメントがあれば記入願いたい。
4.評価者の国籍、所属、タイトル、専門と署名(これは極秘扱い)。
でした。評価するのは大変で何遍も資料を読み込んで代表論文(結構、サイエンス、ネーチャー、JACS,マクロモレキュールスなど)も読破して
勉強になりました。
採点は確かに、4.5とか3.7まで出さねばならないので苦しいですね。
評価者は、世界中に頼んだようなので多分公平な結果にはなっているはずです。これらに基づいて待遇(チェアー教授や特別待遇教授、降格など)を決めるようです。
日本の大学でこれをやったら蜂の巣をつついたような騒ぎになるでしょう。
見方によっては、このように評価を厳しくしたら世界大学ランキングは上がるかもしれませんが、長い目で見て良いかどうかは疑問です。早い話が、
この評価だと、湯川先生やLEDの天野先生、中村先生などは生き残れなかったでしょう。
本当は、こういう評価を評価尺度の中に環境意識、人権意識、金銭感覚、倫理観なども入れて、文系や政治家にも適用すれば、今のように混沌とした世界に
ならないで済んだと思います。
早い話が、三菱UFJ銀行の貸金庫問題での半沢頭取の謝罪会見ですが、人ごとのようで呆れました。減俸で済む話では無いと思いますがね。
支店長代理が貸金庫から泥棒するなど思いも寄らないことで銀行の信用丸潰しです。
西 敏夫