2025年4月号の高分子学会会報「高分子」p.190に“貫かれた生涯現役-遠藤剛先生の逝去を悼む(筆者:高田十志和)”が掲載された。寄稿文37でTu先生の話を書いたが、同様に私にとって衝撃のニュースであった。
確か2003年だったと思うがいきなり遠藤先生から会社の方に電話をいただいたことがあり、「未来材料」と言う月刊誌の編集委員になって欲しいということだった。お話を聞いてみると2001年に出版社エヌ・ティー・エス(NTS)から雑誌を創刊し話題のあるトピックスを毎月発行しているとの事。その内容は有機・高分子、無機・金属、バイオサイエンス、エネルギー・資源、環境、情報・通信、光・電子材料、建築・土木と多岐にわたっており、またNTSの吉田社長からも丁寧な説明を受けてとても興味のある内容だったのでお受けすることになった。毎月編集委員会を行っているとの事で東京お茶の水の学士会館を訪問するととてもフレンドリーに受け入れていただき安堵したことを今でも鮮明に覚えている。当時の編集委員の面々である。
遠藤剛 近畿大学分子工学研究所 教授,所長・東京工業大学名誉教授
相田卓三 東京大学大学院工学系研究科 教授
石戸谷昌洋 近畿大学分子工学研究所 客員教授(臼杵追記 元日油勤務)
岩本正和 東京工業大学 資源化学研究所 教授
臼杵有光 株式会社豊田中央研究所 有機材料基盤研究室 室長
大町達夫 財団法人ダム技術センター理事長、東京工業大学名誉教授
澤本光男 京都大学 大学院工学研究科 教授
坪川紀夫 新潟大学 工学部 教授
錦谷禎範 JX日鉱日石エネルギー株式会社 研究開発本部・中央技術研究所 研究サポートグループ エグゼクティブリサーチャー
福長脩 エーステック(株)代表取締役・東京工業大学名誉教授
牧島亮男 北陸先端科学技術大学院大学 シニアプロフェッサー/東京大学 名誉教授
三原 久和 東京工業大学大学院生命理工学研究科 教授
( http://www.nts-book.co.jp/mirai/iin.html から引用、肩書は当時のまま)
会議はいつも15:00ぐらいから始まり次月号の紹介、その先のトピックスの構成、執筆者の確認、査読者の決定など2時間ぐらいで終了した。実はその後には必ず懇親の場が設定されていた。そこでは最近の自身の研究の話、国内外の技術動向、大学のアクティビティ、たまには人事の話なども漏れ聞こえてきて私のような(当時、若手の)企業研究者にはとても新鮮であった。
しかしながら2013年の最初の編集委員会だったと記憶しているが、いきなり吉田社長から「未来材料」の打ち切りの話が切り出された。出版数が減少したことが原因のようだが各委員からはとても残念だけれどそれは仕方がないことだという事でその会合が最後となった。デジタル化に出遅れたことも原因のようであるが、こればかりは致し方が無いことである。
最近は雑誌でもデジタル化して読む(私には読むのではなく眺めるように思うが・・・)傾向があり、検索して決まった内容だけをいち早くつかむ。雑誌「高分子」でもほとんどの方がデジタル化されたものを眺めているように見えるが私は敢えて印刷した本を送っていただいてできるだけすべての項目に目を通すように心掛けている。思いかけないところに何かヒントがあると考えているからだ。
また時効だと思うので言うと2016年の高分子学会の会長に立候補するように言ってくれたのは実は遠藤先生なのである。話があるので新横浜まで出てきて欲しいという要請があり、あたふたと出かけたのであるがその際に言われたのが高分子学会の体質を変えてほしいとの事であった。ずっと大学関係者が会長職をやっているので学会のアクティビティが減少していると相当心配されていた。赤字体質からの脱却や企業のかかわり方などかなり具体的に話をしていただき私をその気にさせてくれた。残念ながら会長選挙には落選してしまったがそのような気持ちを持っている先生がいらっしゃることが支えになったことは言うまでもない。
話は逸れてしまったが遠藤先生には非常に多くの幅広い知識と人脈を与えていただき本当に感謝している。この場をお借りして心よりご冥福をお祈り申し上げます。
1 thought on “20250406. 41. 遠藤剛名誉教授の思い出”
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メール拝見しています。私も遠藤先生(1939~2025年)のご冥福を祈っています。
彼は、高分子学会の会長を2002~2004年と務められましたが、私は1988~2000年に常任理事、2000~2002年に副会長、2002~2004年に常任理事
をしていました。特に私は、2003年に東大が定年になり、東工大に呼ばれましたが、遠藤先生は、東工大資源化学研究所長をされていたため、高分子学会で何かをやるときに同じ大学という事で随分助けて頂きました。当時は、私も元気だったので高分子学会で初めての「放送大学の物質の科学・有機高分子講義シリーズ、2002年」、「工学系基礎教材・ポリマーサイエンス、
CD-ROMシリーズ、2001年:高分子合成、2002年:高分子構造・高分子物性、2003年:高分子素材」、「高分子の記念切手発行」など珍しい企画を主導したのですが、いろいろ抵抗勢力が多くて苦労しました。彼はいつも味方になってくれました。老衰で亡くなら残念ですが、私より3年先輩でしかないので内心ヒヤヒヤ物です。
資源化学研究所(資源研)は、すずかけ台キャンパスにあり、1939年に創立され、導電性高分子でノーベル賞を受賞された白川先生も若い頃助手を勤めておられました。しかし、2016年から「化学生命科学研究所」に生まれ変わったようです。世の中変わって行く物ですね。臼杵先生は、NTS社の「未来材料」(2001~2013年)編集委員をされていたとの事ですが、調べてみたら、私も未来材料2003年4月号、76~80ページに「ポリマーABCからポリマーナノテクノロジーへ」という総説を書いていました。NTS社の吉田社長は面白い方で確か「シルクロードの探検」が趣味だったと思います。私もシルクロードには興味があり、意気投合して、NTS社から
・ポリマーABCハンドブック、2001年1月1日発行、B5判1201ページ、編集代表:秋山、伊澤、西。
・高分子ナノテクノロジーハンドブック、2014年3月11日発行、B5判1031ページ、編集代表。
・表面・界面技術ハンドブック、2016年4月19日発行、B5版796ページ、監修(臼杵先生は編集委員のお一人)。
など出版しました。今でもNTS社は頑張っているようです。
西 敏夫