(NPO)ナノ構造ポリマー研究協会会員の皆様には、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。トランプ大統領の就任にともない、その言動一つとってもメディアの過剰な報道が継続し、不安や心配が募るばかりです。国際紛争(ウクライナとロシアとの3年に至る戦時状態、イスラエルにおけるパレスチナなど中東情勢)、米国第一主義の考えか大幅な関税の引き上げや移民問題も大きな問題となっています。気候変動に伴う大災害(大幅な温度変動に伴う台風による水害や広範囲にわたるカルフォルニア地区の火災被害など)、国内では昨年元旦に発生した石川県能登半島大地震や自然災害の発生は、記憶に残っています。NPO法人ナノ構造ポリマー研究協会では、石川県能登半島大地震をはじめ、社会奉仕活動の一助として、東日本大震災、熊本県大地震、ウクライナ国際紛争で義援金を行っており、今後も災害義援金などによる社会奉仕に努めてまいります。一方、スポーツの世界では日本人の若手が大いに活躍し、大谷翔平選手の50-50(50本塁打、50盗塁)、本塁打王、打点王、MVP、ワールドシリーズ優勝は、彼の持って生まれた才能・運動神経だけでなく、精神力の強さを痛感しました。私自身は、イチローさんの日米同時の野球殿堂入りは、長年に渡る活躍の継続が認められたものと認識しています。
科学分野でも大きな潮流があり、2024年度のノーベル物理学賞・化学賞にAI分野が受賞されました。
10月8日に発表があった物理学賞は「機械学習」や「深層学習」(ディープラーニング)の基礎を築いた米国とカナダの2氏が、9日発表の化学賞はタンパク質の設計と立体構造予測にコンピューターとAIを活用した英国と米国の3氏が栄誉に輝いた、とのことです。
但し、急速なAI進歩に伴って偽情報や偽画像が拡散している現状に警鐘もされています。今から15年ほど前に社内で古河電工における解析技術のミッションとして、先端分析・解析技術による素材力強化(機能発生メカニズムを解明し、研究開発を加速!)、 (社外大型施設の活用:JFCC・SPring-8・J-PARC)、(先端シミュレーションによる素材力強化(材料設計シミュレーション技術を構築し、研究開発・材料設計を加速!)、大型計算機の導入、社外施設の活用:TSUBAME (東工大)を提案して活用していましたが、本AI技術の進歩は目覚ましく進展していると思いました。しかし、私はAIがクローズアップされすぎている印象に危惧しています。臼杵先生が昨年からナノ構造ポリマー研究協会のホームページに、これまでのご研究のフィロソフィを寄稿されていますが、個人的には新技術の発見や進歩には、各研究者の長年の実験や知見や思い、経験に基づく、セレンディピティ(思わぬ発見)が原点であり、AIはあくまでも手段の一つと認識しています。そこで考えさせられたのが、「過去の先人から学ぶ接着・粘着技術のロードマップ」でした。ここ2年間のニュースレターにて、近年、マテリアルインフォマティクス、人工知能(AI)、接着剤の硬化プロセス条件の効率化、及びバイオマスによる新規接着剤・粘着剤、解体性接着技術などの研究が進展している。将来的に、環境に優しさを要望とされる接着剤が、瞬時に選択できる時代となり、研究開発の一助になることを期待している。近年、マテリアルインフォマティクス、人工知能(AI)、接着剤の硬化プロセス条件の可能性に期待する旨、紹介させていただきました。しかし、AIは手段です。粘着・接着の技術ロードマップを振り返ると既に先人のアイデアがあります。例えば、ニチバンが開発されたセロハンテープは天然ゴム系粘着剤であり、セロハンテープの構成:剥離剤、木屑のセロハン、くっつく粘着剤(粘着剤は天然ゴムや、数種類の樹脂、老化防止剤などが添加されている。セロハンの原料は木材チップ:「パルプ」と呼ばれる。
現状の社会動向は環境と調和した経済・社会システム(地球温暖化、自然災害)であり、そのキーワードとしてカーボンニュートラル、SDGs、リサイクルとサーキュラーエコノミーが挙げられていることに変化はありません。また、接着剤、粘着剤を含めたポリマー、プラスチックにおける社会課題では海洋プラスチック、マイクロプラスチックがあり、その対策として3R(リサイクル、リユース、リデュース)、効率的な回収と焼却/不法投棄への対応が進められていることも事実です。今後、高分子のリサイクルやサーキュラーエコノミーに関する知識を含めた講演会や勉強会、見学会などを企画し、ナノ構造ポリマー研究協会の発展に繋げていきます。最後に、会員の皆様には、ナノ構造ポリマー研究協会の活動にご賛同いただき、活発な意見交換&ネットワーク構築の場になることを祈念し、2025年度における代表理事の挨拶とさせていただきます。