EV電池「液浸冷却」に脚光、500kW超の急速充電が起爆剤
2025.02.13 日経クロステック/日経Automotive
電気自動車(EV)用電池の冷却技術が新たな段階に入った。注目を集めているのが、冷却液をパック内部に満たし、セルを直接冷却する「液浸冷却」技術だ。
一方、金属製の部品に冷却液を流してセルを間接的に冷やす従来の方式も改良が進む。 冷却技術の開発が加速する背景の1つに、急速充電の需要が増加していることがある。
中国を中心に500kWを超える超高出力の充電器を使用して、5分間など短時間の充電を想定するEVが相次いで発表されている。電池セルの劣化を抑えるためには、急速充電中の発熱の抑制が欠かせない。
現在、 EV電池の冷却では「クーリングプレート」と呼ばれる金属製の部品を使用し、その内部に水や冷却液(冷媒)を流す「間接液冷」方式が主流である。
EVの開発における初期段階では、空冷のシステムを使用する例もあったが、車載電池の大容量化や高出力化によって最近では採用事例が減ってきた。例えば、日産自動車は2010年に発売したEV「リーフ」で自然空冷方式による電池パックを採用したが、2021年発売の「アリア」や2022年発売の「サクラ」では間接液冷に変更した。間接液冷は冷却性能が向上する一方で、クーリングプレートとセルの位置関係によって、セル間で温度差が発生する。セルの形状にも左右されるが、温度差は同一のセル内でも生じる。液浸冷却向けの冷却液を開発する米化学大手Dow(ダウ)の日本法人、ダウ・東レ(東京・品川)で研究開発部門応用技術1部部長を務める吉田宏明氏は「セル間でもセル内でも、(温度の)ばらつきがあると性能を発揮できなくなる」と指摘する。
これに対して、液浸冷却ではクーリングプレートを使わず、直接パック内を冷却液で満たす。そのため、電池セル全体が冷却液と接触し温度差が生じにくい。吉田氏は「温度差を解決する単純なアイデアとして『どぶ漬け』は有効だ」と語る。液浸冷却の開発を2016年から進めてきたのが台湾XING Mobility(シン・モビリティ)である。同社は、既に2024年9月に量産工場である「XING Paradigm Factory」を設立し、グローバルに供給できる体制を整備済みとする。冷却液は、英BPが開発するものを使用するほか、2024年12月にはENEOSとも冷却液の開発で提携を結んだ。
欧州では、フランスValeo(ヴァレオ)やドイツMAHLE(マーレ)も開発を進める。液浸冷却向けの冷却液はDowの他に、フランスTotalEnergies(トタルエナジーズ)がValeoと提携して開発する。現在の採用実績では、XING Mobilityが英Caterham(ケーターハム)の次世代スポーツカー「Project V」で採用が決定している他、複数の乗用車、商用車メーカーと交渉を進めているという。Dowも中国でEVバス向けの採用実績が既に10年以上あるとする。
中国BYD、超高速EV充電技術発表/ガソリン車の給油並みの速さに
Reuters
中国の電気自動車(EV)メーカー、比亜迪(BYD)は2025年3月17日、ガソリン車の給油とほぼ同じ速さでの充電を可能とする新たなEV向けプラットフォーム「スーパーeプラットフォーム」を発表した。
中国全土に充電網を構築する計画も合わせて発表した。
新プラットフォームの充電速度は最大1000キロワットと、米EV大手テスラの最新のスーパーチャージャーのほぼ2倍の速さとなる。創業者の王伝富氏によると、同プラットフォームを搭載したEV車では、5分間の充電で約400キロの走行が可能になる。
当初は、新型EVセダン「Han L」とEVスポーツ多目的車(SUV)「Tang L」に搭載され、価格は27万元(3万7328.91ドル)から。さらに、中国全土に4000超の超急速EV充電スタンドを建設する計画とした。ただ、建設に要する時間や投資額については明確にしていない。
宮本
凄いですね。日本の急速充電の主力は50kWh。最新ニッサンリーフでは最大150kWの急速充電に対応し、150kW出力の充電器使用時には約35分で10〜80%まで充電可能とのこと。充電に時間がかかるという欠点が言われてきましたが、それが1000kWとなれば日本の20倍。充電する時間は理屈からは1/20になるということになるので充電に時間がかかるとは言えなくなりそうですね。もちろんそのためには大電流が流れるのでその発熱もすごいことになりクルマとしても電池の冷却をどのようなシステムにできるかということは課題だとは思います。EVが言われている欠点は随分緩和されてきていますね。
急速充電は「充電出力」が大きく、短時間で充電できる仕様になっているので、普通充電器の多くが3〜6kWの出力で充電する仕様である一方、急速充電器の多くの最大出力は50kW程度で、最近は90kWや150kWといった高出力器の設置数が増え、次世代超急速充電器350kW(一口最大出力350kW,総出力400 kW(最大電流400A×最大電圧1,000V))の共同開発も進められていますが、電池の劣化はこの急速充電時に最も大きいと言われて電池の温度が上がるのを防ぐ方策としてこの液浸冷却システムは必須になってくるのではないかと思います。EVの航続距離が短いということも電池容量を上げることで対応してきているし(勿論その分で価格が高いし重量が重い)、充電時間が長いということも充電設備の超高出力化と電池の冷却システムによって短くもできる。技術的にはEVの欠点は課題がまだあるものの解決の方向にあると思います。普通充電の場合、バッテリーがほぼ空の状態から満充電までに数時間〜十数時間かかりますが、急速充電ならより速く充電することが可能です。ただし、専用の急速充電器が必要で、数百万円と高価なだけでなく、一般的に変電設備(直流仕様)も必要となります。そのため、急速充電器は家庭に設置するものではなく、高速道路のサービスエリア(SA)や道の駅、自動車ディーラー、商業施設などに設置されることになるかと思います。
以上