バックの油絵はオークションで一目惚れして落札した東郷青児の油彩画です。
「名誉会長就任1年の随想」
NPOナノ構造ポリマー研究協会の代表理事を2012年3月から11年間務めさせて頂き2023年4月から名誉会長(理事)を仰せつかって1年経過した。
立場が変わって幾分楽になったが協会運営はいろいろな問題を乗り越えて一応順調に進んでいるし、決算は健全である。これからも委員の一人に加わらせていただいている運営委員会を中心に、会員皆様のご協力によってナノ構造ポリマーの発展に貢献したいと思っている。
最近は、特にナノ構造を制御したポリマーアロイ、超薄膜、ナノコンポジット、マイクロ・ナノ加工の研究開発や実用化が実際に進んでいる事が本協会の各種の講演会、セミナーなどで身近に感じられる。但し、2020年から始まったコロナ禍のためオンラインが多く、本協会の特徴であった対面による徹底した討論、講師を囲んだ懇親会、見学会などがあまり出来なかったのが残念である。幸い、現在は第10波が減少しつつあり、近い将来に本来の姿が取り戻せると期待している。オンラインには多くの利点があるのでそれも生かして新しい次元の活動になって行くであろう。
コロナ禍のために海外出張が制限され日本全体が内向きになってしまったが、国際的に見ると危機感を持たざるを得ない。例えば、オーストラリア戦略政策研究所の2023年版報告書によると、国別技術競争力ランキング全44項目の内、我々に縁が深い「先端材料・製造部門」の「ナノスケール材料と製造」では、1位が中国で以下米国、インド、韓国、イランと続き、日本は、11位である。今流行の「人口知能など」部門の「AI・アルゴリズム」では、1位が中国で以下米国、イギリス、韓国、インドと続く。日本は、何と20位に落ちる。「機械学習」でも、1位は中国で以下米国、インド、イギリス、韓国で、日本は、11位である。尚、44項目中で中国は37項目が1位であり米国を圧倒している。米国の中国叩きが止まないのはこのためであろう。これらの結果は、俄には信じがたいが、第3者の分析は貴重である。どのようなデータを元にこうなってしまったのか国を挙げて原因を究明して早急に対策を打たねばならない。
最後に筆者はいつの間にか80歳の壁を乗り越えて81歳になってしまった。バイデン大統領と同い年である。彼には専用の飛行機、車、ヘリコプターがあり国内外で大活躍し、次期大統領再選を狙っているがどうしても健康不安説には逆らえない。また、同い年の世界的ピアニストだったマウリツィオ・ポリーニが3月23日に亡くなった。このところ彼が残してくれたCDを毎日1枚聴いているが、その完璧さには感嘆せざるを得ない。彼のショパン、シューマン、ベートーベン、ブラームス等の名演は永遠に残るであろう。身近でショックだったのは、同い年のお気に入りだった女優の山本陽子さんが2月20日に急性心不全で亡くなった事である。数十分前までは元気だったそうである。筆者もどうなるか分からないが名誉会長として本協会に対して出来るだけの事はしたいと思っている。