中国自動車情報202403

中国EVの強みは”価格”だけじゃない!
「自動車強国」へと突き進む巧妙戦略

中国政府は2023年12月末、2027年までにNEVの比率を45%まで高めると発表した。これまで2030年としていた目標を3年前倒しした。計画の前倒しを示したのは、中国国務院(諸外国における内閣)が発表した「美しい中国建設を全面的に推進する意見書」で、従来のエンジン車に関しては「基本的に淘汰する」としている。2023年上半期の中国の自動車輸出台数は214万台で、前年同期比75.7%増となった。このうちNEVは53万4000台で、前年度比で160%増となった。EVに限れば2022年の世界の販売台数ランキングの上位15社のうち6社は中国企業となっている。そのうち、比亜迪(BYD)の販売台数は185万台。グローバルシェアは18.3%となり、米テスラ社の13.0%を上回り世界1位に躍り出た。中国でNEVが急速に普及した背景には、国家規模での政策がある。中国では自動車を取得する際には10%の車両取得税が課せられているが、2014年以降NEVに関しては免税措置が実施されている。この免税措置は2017年、2020年、2022年と3回にわたって延長され2022年までの免税額は累計で2000億元を超えたとされている。2023年6月には、さらに延長措置が発表された。現在の免税措置は次のようになっている。2024年1月1日から2025年12月31日までに購入された新エネ車に対し、1台当たり3万元(約60万円)を上限に、車両取得税を免除する。2026年1月1日から2027年12月31日までに購入された新エネ車に対し、1台当たり1万5000元を上限に、車両取得税の50%を減税する。ここまでして、中国政府が普及を進めた理由は、自動車の分野で世界の覇権を握る狙いがある。中国政府のNEV関連施策は、既に20年あまりの年月が費やされた長期にわたるものだ。中国におけるNEV開発政策は2001年の「第10次経済社会発展5か年計画」以降、段階的に進められてきた。第10次(2001~2005)は技術開発段階とされ、以降5年区切りで産業戦略計画段階・国家戦略実施段階・成長模索段階と成長してきた。このなかで、地方政府でも補助金支援を実施され普及が図られた。それ以上に効果的な政策とされたのが、「自動車台数制限からの除外」である。中国大都市部では、自動車の急増による申告な大気汚染と交通渋滞を解決する方法として、「ナンバープレート発給を規制」して台数を制限している。この施策により、上海、北京、広州、天津、深センなどでは新車を購入することは困難である。そこで各地方政府では、NEVに対してはナンバープレートの発給規制から除外する方針を打 ち出し、転換を進めたのである。また、2019年から実施された施策では、中国国内でガソリンやディーゼルを用いる従来型乗用車を年間3万代以上生産・輸入するメーカーに対して、一定の比率でNEVの生産・輸入することを定めている。このように中国では、他国では例を見ない国家の強力なバックアップによってガソリン車からの転換が加速したのである。この先に中国政府が目指しているのは「自動車強国」だ。自動車本体だけでなく、関連部品の産業の技術を蓄積することで、世界のNEVの主導権を握ることが期待されているのである。しかし、中国製NEVの本当の脅威は”価格”ではない。急速な普及による産業拡大と共に蓄積されている「関連部品産業」である。世界各国のメーカーでは、EV化をにらみ 半導体やソフトウエアなどの基礎技術に磨きをかけている。国家の強力な介入で生産が拡大した中国では、技術を蓄積するスピードも一段と速い。各国が争うNEVでのシェア獲得競争において、中国の権威主義的体制は、有効に機能したといえるだろう。ただ、ここで懸念材料とされるのが、中国の大幅な景気後退だ。中国史を振り返ると、万里の長城や大運河は後の時代には有効に機能したが、事業を始めた王朝は、事業が衰退の原因となり、のちに滅亡へと至っている。中国の自動車産業の動向は、今後の体制の行方を左右するものになっている。

中国EVに”逆風” 国内外で異変

補助金打ち切り、乱立した新興メーカーの競争激化中国全国乗用車市場情報連合会によると、EVやプラグインハイブリッド車の2024年のディーラーへの出荷台数は前年比25%増の1100万台と予想されている。2023年の36%増、2022年の96%増と比べ減速が目立つ。新興企業の破産や、従業員の削減なども報じられた。欧米市場でも異変が生じている。欧州連合(EU)は昨秋にEVに関する補助金の調査を開始した。フランスはEV購入に最大7000ユーロ(約110万円)を支給する国内制度を改定した際に中国製輸入車を対象から外した。ドイツ政府も昨年12月、EV購入時の補助金制度を打ち切った。ジョー・バイデン米政権は昨年12月21日、中国製EVなどに対し、関税の引き上げを検討していると、米ウォールストリート・ジャーナルが報じた。充電時間に対する走行距離の短さといった利便性や原材料費の高コスト、使用済みバッテリーの回収など課題もあり、世界的にEVよりもPHEVやハイブリッド車が好まれる傾向になりつつある。

独VW、中国・安徽省の新工場稼働。現地の「EVサプライチェーン」取り込む狙い

欧州市場への輸出拠点に

VWが中国の新工場で生産を始めた小型EV「セアト クプラ・タバスカン」は、ヨーロッパ市場に輸出される。2024年には中国市場向けの新型EVの生産も開始する計画。新工場の建設主体である大衆汽車安徽(VW安徽)は、VWにとって中国で3社目の完成車の合弁会社。安徽省政府系の国有自動車メーカー「江淮汽車」との対等出資で2017年に設立された後、中国政府の外資規制の緩和を受けて、2020年にVWが出資比率を75%に引き上げた。VWは、上海VW、一汽VWの工場でも、それぞれEVを生産している。長年にわたって、上 海VWと一汽VWを中心に中国事業を展開してきたが近年、中国市場での新たなトライア ルをVW安徽から着手するケースが目立つ。VWはここにきて中国での研究開発能力の強化を急いでいる。合肥市はその投資の中心地でもある。研究開発子会社、部品子会社、デジタル販売サービス子会社などを続々と設立しており、それらの総投資額は計画ベースで231億元(約4609億円)に上る。

中国自動車市場「PHV猛追」で崩れるEVの一人勝ち

将来の比率は「PHVとEVが半々」という見方も

急激なEV(電気自動車)シフトを続けてきた中国の自動車業界で、エンジンを併用する PHV(プラグインハイブリッド車)の競争力を再評価する声が高まっている。吉利汽車(ジーリー)の淦家閲CEO(最高経営責任者)は1月5日、新型EV「銀河E8」の発売イベントで、「PHVとEVは今後も長きにわたり併存するだろう。新エネルギー車市場における比率は、それぞれ半分ずつになる可能性が高い」との見方を披露した。事実、PHVの販売台数はEVを猛追している。中国市場における2023年1月から11月までのPHVの販売台数は、レンジエクステンダー型EVを含めて243万9000台と前年同期比83.5%も増加した。これに対して、同じ期間のEVの販売台数は586万台と絶対数では大きく上回るものの、前年同期比の増加率は23.6%にとどまった。中国市場でのPHV人気を象徴する1社が、新エネルギー車専業大手の比亜迪(BYD)だ。同社の2023年の販売台数はEVが157万5000台だったのに対し、PHVは143万8000台とその差14万台弱に迫った。その他の中国メーカーも、PHVやレンジエクステンダー型EVの追加投入を急いでいる。中国の自動車業界では、新エネルギー車の自動車取得税減免など中国政府の優遇政策に関して、PHVはいずれ対象から外されるとの見方が主流だった。ところが2023年6月、政府が従来の優遇政策を2027年末まで延長すると発表したことが、PHVの追い風になっている。

韓国・現代自動車が中国・重慶を去る → 部品メーカーも撤退

韓国の自動車部品メーカー「現代モービス」が2017年に竣工した中国の重慶工場を売 却する手続きを進めている。現代自動車が最近、重慶工場を売却するなど、中国事業の構造調整を進めたことによる決定だ。現代モービスは重慶をはじめ、北京、江蘇、無錫、天津など7つの生産施設を置いている。現代モービスが重慶工場を売却することにしたのは、現代自動車の中国での販売不振による事業再編の影響だ。起亜を含む現代自動車は昨年、中国市場シェア1.4%で過去最低値を記録した。現代自動車は2021年、北京第1工場を売却したのに続き、最近、重慶工場を16億2000万元で売却した。5カ所だった工場のうち2カ所の売却を完了し、年内にはさらに常州工場を売却する計画だ。現代自動車の不振は、現代モービスの中国事業の悪化につながった。昨年第3四半期の現代モービスの中国売り上げ高は6905億ウォンで、前年同期の7746億ウォンより841億ウォン(10.8%)減少した。営業利益はわずか4000万ウォンで、利益率はゼロに近い。

                   《自動車関連情報》

レクサス『GX』、新型を中国発売。日本円で1600万円から… 日本市場にも導入へ

3世代目モデル。中国仕様車には、アウトドア仕様の「OVERTRAIL」が設定される。現地ベース価格は77万8000元(約1600万円)。「GA-F」プラットフォームを新たに採用することで、静粛性、力強さ、燃費性能をバランスさせ、走行性能を向上させた。OVERTRAILでは、トレッドを20mmワイド化し、ブラックのアーチモールを採用した。また、前後バンパーコーナー下側を切り上げた形状とし、悪路走破性を追求する。センタープロテクションを装着し、オフロード走行時の保護性能を高めた。ボディカラーには、「ムーンデザート」をOVERTRAIL専用色としてラインナップした。ドアミラーカバーやドアハンドルは、ブラック仕上げ、としている。

パナソニックHDの楠見雄規社長。EV電池、拠点拡大の前に生産性向上

傘下の電池子会社パナソニックエナジーで、2030年度までにEV電池の生産能力を2022年度比約4倍の200GWhまで拡大する方針を掲げる。そのため2023年度中に米ネバダ州、米カンザス州に続く第三の拠点を決定するとしていたが、12月には、候補の一つだった米オクラホマ州に建設する案を見送ることを発表した。「第三の拠点を構える以前に、生産性を徹底的に上げる」といい、中でも人的分野での改善に着目しているという。現在自動化した生産設備のそばでメンテナンスを行う要員が必要だが、やり方を変えるなどすることで人員を半分にするなどし、生産性を倍増したい考え。2024年度中の量産開始を予定しているカンザス工場で生産性向上のためにできることをこれまで以上に検討していくという。パナソニックエナジーは、主に米テスラへバッテリーを供給し、マツダやSUBARUとも協議を進めているが、第三拠点の決定の時期について楠見社長は、「しかるべきタイミングに決める」と述べるにとどめた。パナソニックHDは、バイデン米政権のインフレ抑制法(IRA)に基づくEV電池事業向け補助金が業績に寄与するなど政策の恩恵を受けている。11月には米大統領選挙を控え、政策変更のリスクもあるため、楠見社長は、「IRAがなくても利益が出るような形に改善していく」という。

曙ブレーキがEV高性能ブレーキで中国顧客開拓

日系車メーカー苦戦で

曙ブレーキ工業は2024年度に中国事業で、現地メーカー向けの売上高比率を2023年度見込み比2倍以上となる4割程度に引き上げる。中国の現地メーカーは新車の開発期間が日系メーカーに比べて半分程度と短い。こうした開発スピードに対応するため、曙ブレーキは現地の開発人員を増員しており、すでに2021年6月時点に比べて現地開発人員を2倍の規模に増強した。今後も受注案件に応じて人員を補強する。シミュレーション技術の活用による開発工数の削減も推進する。現在、中国現地メーカーでは吉利汽車や新興EV勢の小鵬汽車、理想汽車などと取引がある。電動車は電池の搭載などによる重量増に加え、モーター駆動でトルクも大きくなるため、制動力の高い高性能ブレーキへの引き合いが強まっている。曙ブレーキの宮地康弘社長は「当社は高性能ブレーキに強みがある」としており、取引企業や採用車種の拡大に意欲を示す。宮地社長は「年3000万台の最大市場を指をくわえて見るのは(経営的に)違う」という。日系の自動車部品メーカーでは、小糸製作所が2027年度をめどに中国事業の売上高の うち現地メーカー向け販売比率を30%程度(2023年度見込みは10-15%)に引き上げる方 針。トピー工業は数年前に取引をやめた中国EV大手・比亜迪(BYD)へのホイール供給を再開した。また自動車内装品を手がける共和レザーは、BYDとの取引拡大を目的とした専門部署を設置するなど、カントリーリスクを注視しつつ現地メーカーを攻略する動きが拡大している。

ホンダが電動化加速へ組織改編。4月1日付で三つの本部を新設

生産は生産統括部と生産技術統括部を統合した「四輪生産本部」を設置。事業本部や地域本部などと連携を深め、品質強化や生産体制の高度化を進める。調達は次世代のソフトウエア定義車両(SDV)に合う体制構築や電動化時代に適した品質・コスト・納期の向上を図るため「サプライチェーン購買本部」を新設。品質はデジタル視点の品質保証やサイバーセキュリティーなどを強化する「品質改革本部」を設ける。倉石誠司会長が4月1日付で会長を外れ、6月に取締役を退任する人事も発表した。特別顧問として対外的な役割に集中する。会長職は空席とする。青山真二副社長が担っている最高執行責任者(COO)職は4月1日付で廃止する。執行役が各担当の責任を負う形にして、経営の意思決定を迅速化する。

「EVの航続距離」は氷点下の気温で大幅に減少。その原因と対策

1月中旬、強烈な寒波に襲われ、最低気温が氷点下20度以下を記録したシカゴでは、テスラのドライバーたちがスーパーチャージャー(急速充電ステーション)に長蛇の列を作り、充電が遅い、あるいは「まったく機能しない」といった不満を漏らしていた。「バッテリーの化学反応や物理反応は、気温が低い環境下ではゆっくりと進む。低い気温は、化学反応を抑制し、物理的プロセスを遅らせることになる。これにより、利用可能な電力が減少する」と、EV関連の情報サイトRecurrentのレポートには記されている。EVはまた、「寒冷時には利用可能な電力の最大約30%を失う可能性がある」とリカレントは述べているが、これは気温がバッテリーの化学反応に及ぼす影響だけでなく、ヒーターの使用がより大きな電力消費につながるためだという。寒冷地のEVオーナーはバッテリーの「プレコンディショニング」と呼ばれる操作を通じて、事前にバッテリーを暖めておくことが推奨されている。この操作は、一般的にスマートフォンのアプリを使って行うもので、バッテリーを節約するために車両が電力網に接続されているときに実行するのがベストとされている。

川柳

              ◎やめてくれ、美しい国、裏金で

              ◎元気です、昔の人と、言わないで

              ◎その名前、聞かぬ日は無し、裏金で

              ◎あの世でも、名刺交換、戒名で

              ◎異次元の、キックバックで、議員の座

宮本政義
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Author: xs498889