20261023. 84歳になっての雑感 

この9月下旬で84歳になってしまった。体調はそこそこで、色々な医院通いをせざるを得ないが特に深刻な病は今のところ無さそうである。無理をしないで頑張る予定である。先日、運転免許の更新をしたが、認知症テストは満点、眼鏡、補聴器無しで運転可能となった。車の任意保険も更新したが、今までよりも2万円ほど高額になった。無事故無違反でゴールド免許なのにおかしいでは無いかと保険担当員に尋ねたら「高齢のため」と言われて納得せざるを得なかった。
9月15日発表の統計によると全国で100歳以上の超高齢者は、107,677人で今までで最高だそうな。尤もそのうち女性が88%で男性は1割強でしかないのが心細い。超高齢者から見れば84歳は、はなたれ小僧に違いないがそこまで生きる自信は無い。身近な話では、この所、東工大(現東京科学大学)の高分子関連の先生方が立て続けに亡くなったのがつらい。NMRの安藤勲先生(83歳)、機能性高分子の宮田清蔵先生(84歳)、高分子合成の遠藤剛先生(85歳)、高分子精密合成の石津浩二先生(79歳)、染色加工の小見山二郎先生(90歳)、導電性高分子の白川英樹先生(2026年8月24日没、90歳)などである。
特に白川先生とは、山崎貞一賞の選考委員会で2007年から2019年まで12年間ほどご一緒させて頂いた。先生が選考委員長で、私は数名の選考委員の一人として忌憚ない意見を戦わせた。先生は、候補者の推薦者がたとえノーベル賞受賞者でも忖度のない判断を下され、胸がスッキリしたのを覚えている。又、私が1991年に初めて放送大学で講義を行った際に高分子系のビデオの例として先生が放送大学用に撮られた「導電性高分子の実験ビデオ」を下さったのも忘れられない。とても参考になったが、このビデオは、白川先生が2000年にノーベル化学賞を受賞された際に大活躍した。当時、白川先生は丁度筑波大学を定年退官されていて殆どの資料を処分されていた。ノーベル化学賞の対象になった肝心のポリアセチレン合成実験と沃素ドーピングによる導電性の劇的向上の実験を含めたビデオがこれしか無かったのであった。色々な所に貸し出したのを覚えている。白川先生は、プロジェクトなどの大型研究費よりも少額で良いから自由な基礎研究費を充実して欲しいと言われていたのを思い出す。確かに独創的な研究を育てるにはこの方が理にかなっている。
 もっと身近な所では、栄光学園中学・高校で同期だった桐ヶ谷章君が1月に脳腫瘍で亡くなったのが悲しい。去年までは元気で時々メールのやり取りをしていた。彼は、創価大学名誉教授で最近まで東洋哲学研究所長(2017~2024年)をしていた。最近の戦争だらけ、「今だけ、自分だけ、金だけ」主義がはびこる世界に対して、「東洋哲学」が大事と思い、ナノ構造ポリマー研究会やゴム技術フォーラムで講演してもらい我々の生き方の参考にしたかった。彼には内諾を得ていたが、間に合わなかったのが何とも悔しい。同じノリで栄光学園同期の林吉永氏(元空将補、防衛研究所戦史部長)に10月8日にゴム技術フォーラムで、「日・中・台湾・韓国・北朝鮮などの東アジアの避戦の地政学」という講演をして頂いた。このところ、去年の11月7日の高市総理の「存立危機」発言で日中関係は最悪状態に陥ってしまっている。地政学的に長い歴史を振り返れば、中国とは上手く付き合わねば成らない
筈である。質疑を含めてほぼ2時間の大講演会になったが、その後の懇親会でも盛り上がり、とても元気であった。今でもサッカーをやっているそうな。彼が去年出版した「避戦の地政学」は、アマゾンですぐ手に入る名著だと思っている。AIに翻訳させて、トランプ、プーチン、習近平などに読ませれば世の中がこのような戦争だらけにはならなかったのではとさえ思う。
見方を変えて84歳で亡くなった世界や日本の有名人をAIに尋ねるといろいろ教えてくれるが嘘も多い。自分なりにチェックすると、
・アイザック・ニュートン(1643/1/4~1727/3/3)物理学者、役人。
・ベンジャミン・フランクリン(1706/1/17~1790/4/17)アメリカ建国の父。
・小林一三(1873/1/3~1957/1/25)実業家、阪急グループ・宝塚歌劇団創立。
・北杜夫(1927/5/1~2011/10/24)小説家、精神科医。
・落合信彦(1942/1/8~2026/10/17 2/1)ジャーナリスト。ノンフィクション作家。
などである。
 ニュートンは、古典物理学では神様であるが、以外と人間臭く、ライプニッツとの衝突、錬金術、オカルト研究、更には、「私は天体の動きは計算できるが、人々の狂った行動は計算できない。」と言う名言などいろいろ調べると興味が尽きない。フランクリンも大人物であり、「フランクリンの十三徳」など今でも通用する。今年はアメリカ建国(1776/7/4)250周年であるが、トランプが見事に十三徳を破っているのを見たらフランクリンは呆れかえるであろう。ニュートンもフランクリンも当時としては超長寿命であった。
 日本の小林一三は、先見の明がある経営者であると同時に文化人でもあった。最近の利益追求や投資にしか興味がない経営者とは、次元が違う。少しは、見習って欲しい。
北杜夫の本は、学生の頃「どくとるマンボウ航海記」シリーズなど夢中で読んだ。最近は、このようなユーモア溢れる本が無くなってしまったようで何とも情けない。落合信彦は、今年亡くなってしまったが、若ければ今の混迷を極めた世界情勢を現地に飛んで本当の事を取材してくれたであろう。あれだけ行動力があったジャーナリストは珍しいと思っているが、老衰で亡くなったとは信じられない。
 ぐっと身近なところでは、9月初旬に近所の方から頂いた月下美人が3年経って初めて咲いた。写真1のように夜7時からほぼ1時間で、あれよ、あれよと言う間に4っの花が一斉に満開になった。直径20センチの白い花で、サボンのような香りが部屋を満たした。花を拡大すると写真2のように雄しべ、雌しべに特徴があり、コウモリなどに依って受粉しやすくなっているそうな。翌朝には花はしぼんでしまったが、花びらはさっと湯がいて甘酢漬けにして食べてしまった。山形の「もってのほか」に近い。開花の瞬間に生まれて初めて立ち会えた。長い地球の歴史から見たら、現在の文明は、この月下美人の花のような物かも知れない。戦争など無用の長物である。
 この所タワーレコードで手に入れた限定版全50枚のCDからなる”The Romantic Piano Concerto~1991~2007 Edition”、 ロンドンのハイペリオン社(2026年6月)をほぼ毎日一枚聴いている。埋もれてしまった59名の作曲家によるピアノ協奏曲が130曲、余り有名ではない19名のピアニスト、21名の指揮者、14のオーケストラによる熱演である。かなりの曲が「世界初録音」になっている。メトナー、アレンスキー、スタンフォード、ハーン、ドレイショック、クラック等のピアノ協奏曲で初めて聴く曲ばかりである。何故埋もれてしまったか考えながら聴くと興味が尽きない。実際のところ、彼らは、当時の名ピアニストだったらしく、どれも超絶技巧が要求されていてむしろ普通の有名な曲よりも難しそうである。中にはラフマニノフのように有名な作曲家もいるが、埋もれてしまったピアノ協奏曲第一番など素晴らしい。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番に対抗する気で作ったらしい意欲作でしかも作品番号1番なのが驚きである。音楽院での指導教官はさぞビックリしたであろう。ついでに言うと、同じ6月に出たマリア・ジョアン・ピリスの全集版CD38枚(ドイツ・グラモフォン)も面白い。彼女は、1944年7月23日生まれなので現在82歳であるが、2025年11月1日に引退宣言した。81歳まで現役とは素晴らしい。ポルトガル出身であるが独特の解釈と実に綺麗な音色はかけがえが無い。特に、モーツアルト、シューベルトなど聞き飽きない。これらを楽しんでいれば少しは脳の老化防止に役立ちそうと思っている。
 ナノ構造ポリマー研究協会絡みでは、最近、熱可塑性エラストマー(TPE)を使った枕に嵌まっている。一部では、「羊が要らない枕」とも宣伝しているようである。TPEをハニカム状構造に射出成形し、頭を乗せると上手い具合に座屈して圧力を分散する。この枕を使うようになって今まで夜中に2回起きていたのが1回で済むようになった。20年前にTPE技術研究会を立ち上げ、TPEの科学技術等について勉強してきたが、面白い製品が出てきたと喜んでいる。TPEを使ったマットも出てきたようでこれからの高齢化社会で役立つであろう。更に、2025年から福岡市で浸透圧発電が実用化されたという。これは、海水淡水化施設から排出される高濃度海水と下水処理施設からの排水とを浸透膜を使って発電するというイノベーションである。浸透膜、海水淡水化にもナノ構造ポリマーが活躍するので楽しみである。また、東大が60年ぶりに「デザイン学部」を始めた。学部長は外国人、授業は英語など思い切った内容にして将来が期待できそうである。
 暗い話題では、次期東大総長に女性の藤垣教授が決まったが、選考課程が不透明で禍根を残しそうである。学内投票ではスキンエレクトロニクスやストレッチャブルエレクトロニクスの発明で世界中で著名な染谷教授が1107票を得たのに対して、科学技術社会論や科学計量学の藤垣教授は553票しか得ていないのに最終選考で逆転してしまった。東大初の女性総長は歓迎するが逆転理由が不明としか映らない。もっと広い目で見ると最近のAIの進歩が早すぎて「近いうちに人類を滅ぼす!」とまで言われるようになった。実際、AI開発企業のトップが退職し始めたという。また、世界中でAIを悪用した個人情報流出事件が大規模に起き始めた。超知能AIやスーパーAIには歯止めが欠かせない。AIの善用より悪用の方が先行しそうである。何とかしてAIに「自由・平等・博愛」や「モーセの十戒」などのような意識を叩き込まないと本当に拙い事になりそうである。
 最後にトランプが中間選挙が近づくにつれ「国際刑事裁判所ICCへの制裁」、「共和党が勝利したら全米の選挙権者に5000ドル配布」、「軽油値上がり対策としてロシアへの経済制裁延期」、「太平洋のアメリカ洋への変更」その他支離滅裂な事を言い始めた。アメリカ国民の良識に期待するしかない。
 ここまで書いたところで兄(スタンフォード大学名誉教授)の訃報が入った。今年の6月末に東京で帰国祝いの昼食会をしたばかりなので信じがたい。72歳になった林真理子のベストセラー「80代になるとボケるか死ぬ。70代は神様から与えられた特別な時間」(幻冬舎新書)が奇妙に現実味を帯びてきたこの頃である。
 4歳になっての雑感                西 敏夫


 
 
 
 

Author: xs498889

1 thought on “20261023. 84歳になっての雑感 ”

  1. 西先生:

    ご寄稿ありがとうございます。さまざまな方面に縦横無尽にお話を展開され、感銘を受けました。
    梁さんから身内にご不幸があったようだと伺っておりましたが、お兄様だったのですね。心よりお悔やみ申し上げます。

    中嶋

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