西 敏夫代表理事

「with Corona, post Corona時代のナノ構造ポリマー研究協会」

令和になって気分を刷新し物事を落ち着いて進められる良い機会と考えていたが、2019年12月に中国の武漢で始まった新型コロナウィルス(COVID-19)が本当のパンデミックとなり、世界を揺るがす事態になった。観光、航空、飲食、小売り、デパート、ホテル・旅館業界等は大打撃を受けている。2020年開催予定が2021年開催と延期された東京オリンピック、パラリンピックも規模を縮小し、2021年3月21日には海外からの観客受け入れ禁止となった。今の感染状況では、開催自体が危ぶまれている。一方、在宅勤務が増えたため、テレワーク用のPC,関連機器、半導体業界、IT業界(GAFA等)は絶好調である。また何故か株価は高騰を続けている。
我々に関係する分野では、以下の3点が今後に大きく影響するであろう。
1)2020年10月26日に菅内閣が宣言した、「2050年カーボンニュートラルの実現」。
2)2020年12月3日に政府から発表された、「2030年前半からのガソリン車販売禁止」。
3)マイクロプラスチック問題。
他にもとんでもないことが次々起きている。詳細は次節に述べるが、先ず本協会について復習しておきたい。NPOナノ構造ポリマー研究協会が伊澤博士らにより2002年7月に発足して以来今年度で20年目となり、筆者が2012年4月に本協会の代表理事を仰せつかってから10年目となる。本研究協会の目的は、「ポリマー材料と加工技術の実用化を通して経済や社会に大きな影響をもたらしているナノ構造ポリマー技術の研究の経緯と実現への道筋とを、広く社会に対して情報発信しつつ共有化する。」である。この目的を実現するために、ナノ構造ポリマー研究会(2001年4月~)、同公開研究会(2002年8月~)、TPE技術研究会(2006年12月~)、同公開講演会(2006年11月~)、ナノ構造ポリマー交流会(2002年~)、マイクロ・ナノ加工研究会(2014年3月~)、同公開講演会(2013年12月~)等を行っている。更に2020年8月からは、COVID-19対策としてウェッブによるセミナー(Webinar)を開始した。詳細は、 https://ransp.jp/index.html/ を参照されたい。本協会は、皆様のご協力で順調に発展し、当初の目的を遂げつつあると確信している。2020年度の決算もお陰さまで健全財政と言える水準にある。
また2017年7月にはかねてからの懸案であった法人所在地の千代田区への変更、実情に即した定款の改正を行う事が出来た。
ところで、協会外に目を配ると、最近は想定外を越えてマサカ、トンデモナイとも言うべき事象が頻発している。我々に大なり小なり関係することをほぼ時系列で例示すると、
2018年1月から始ったトランプ大統領がしかけた米中貿易戦争が依然として続いている。関税戦争となり、実際の産業界への影響が出始めた。日本企業への悪影響も深刻化している。ただし、2021年1月20日にバイデン新大統領が就任したので状況は改善の見込みである。
2)2020年4月7日~5月6日まで初の緊急事態宣言(東京は5月25日まで延長)。
3) 4月20日:マスク不足(2月1日~5月10位まで)に対応してアベノマスク
を全国民に配布決定(予算466億円)―――筆者の家に届いたのは、5月22日で遅すぎ。
4) 特別給付金(全国民):1人に付き10万円。筆者の家には5月27日振り込み。
5) 東京アラート発出:6月3日~6月12日。
6) 7月9日:COVID-19の空気感染可能性。
7) 7月22日:Go To トラベル開始。
8) 7月30日:感染拡大特別警報。
9) 8月28日:安倍首相辞任。
10) 9月6日:台風10号による九州甚大被害。
11) 9月16日:管首相就任。
12) 10月1日:管首相による日本学術会議会員の一部の任命拒否。
13) 10月26日:管内閣の2050年カーボンフリー宣言。
14)12月3日:政府による、「2030年前半からのガソリン車販売禁止」発表。
15) 2021年1月6日:トランプ支持者による米国議会乱入事件(死者5名)。
16) 第2回緊急事態宣言。2021年1月8日から2月7日まで(その後3月7日まで延長。
東京は、3月21日まで延長)。
17) 1月20日:バイデン大統領就任。トランプ大統領不在下。
18)2月1日:ミャンマーでの国軍によるクーデター。
18) 2月17日:日本における最初のCOVID-19ワクチンを医療従事者へ接種開始。高齢者への接種は4月に開始予定。詳細不明。
19) 3月21日:オリンピック・パラリンピックは、海外からの観戦者不在とする事が決定。 

尚、現時点(2021年3月21日)におけるCOVID-19の感染状況を見ると、全世界での感染者数は、約1.3億、死者数は約270万である。米国は、それぞれ、約3000万、約55万、ブラジルは、約1200万、約30万、英国が約430万、約13万、フランスが約425万、約9万、ドイツが約266万、約7.5万である。日本は、それぞれ約46万、約9千であるが感染源の中国は約10万、約5千である。中国は、COVID-19のコントロールに成功し、経済成長率はプラスになっている。他の先進国は、軒並みマイナスである。米国の死者数は、第一次世界大戦、第二次世界大戦、ベトナム戦争での米軍死者数の合計を上回ったという。コロナ禍は、正に戦争に近い。最近は、ワクチンの普及と共に収束に向かいつつあるが油断大敵である。
他にもこれからマサカ、トンデモナイ事件が多発しそうである。令和の英訳は、Beautiful Harmonyとのことだが、現実は全くその逆である。せめて元号だけでも頑張って欲しいと思わざるを得ない。

個人的な話で言うと、2020年2月中旬以降国内外の出張は殆どが延期か中止となり、殆どがZoomによるオンライン会議とテレワークになってしまった。COVID-19禍のため今までのグローバル化が突然分断されてしまった。これは個人レベルだけでなく産業レベルでも起きておりこの影響は正に深刻である。東日本大震災やリ―マンショックを遥かに凌ぐインパクトである。また長年の免震ゴムの普及に対して2021年7月8日に日本免震構造協会の総会で「普及賞」を受賞したが、ウェッブ授賞式のため実感が沸かなかった。また、巣ごもり時間を活用してプラスチックスエージ誌から依頼された「私的プラスチック工業史」を2020年9,10,11,12月号に連載することが出来た。反面、在宅勤務による運動不足の為に筋力、運動神経が鈍り、9月28日に玄関先で転倒し、左上腕骨骨折、前歯3本が折れてしまった。9月30日~10月23日と入院して手術を受け、現在は完治した。近所でも転倒事故の話が多い。会員の皆様も十分注意されるよう願っている。

科学技術に絞って見ると、2016年4月から2021年3月まで国の第5期科学技術基本計画が実行に移されている。主眼は、Society 5.0で実現の鍵は、IoT, ビッグデータ、人工知能、ロボット、オープンイノベーション等とされている。これは材料面で見ると、例えば、「軽くて強靭な材料」となるであろう。一つの素材で実現するのは困難なので、複合材料やナノコンポジット、ポリマーアロイなどナノ構造ポリマーが主役となる。実際に内閣府の主導で始まったImPACTの中の「しなやかタフポリマー」プロジェクト(プロジェクトリーダーは、伊藤耕三東大教授)は、2014年9月~2019年3月の4年半実施され、産学官連携で、基礎研究の他、「薄くてタフな電解質膜、薄膜高強度セパレータ、硬くしなやかな車体構造材、より薄くて軽いタイヤ、強靭な透明アクリル窓」等が開発され、コンセプトカー(ItoP)迄制作公開された。筆者や副代表理事の臼杵氏はアドバイザーを務めたのでこれら新素材の開発には、正にナノ構造ポリマーが大活躍しているのを知っている。今後も本協会の分野に大きな期待が寄せられている。COVID-19関連では、感染防止用のマスク、ゴーグル、消毒液キット、医療用フェイスシールド、アクリル板、防護服、手袋、各種透明シートの他、検査、治療用の検出キット、注射器、点滴用具、人工呼吸器、人工心肺などどれをとってもポリマーが多用されている。一方、第6期科学技術基本計画(2021年から5年間)は、現在検討中で間もなく発表されるであろう。マテリアルがらみのキーワードは、持続可能、マテリアル革新力強化戦術、イノベーション、AI,パンデミック対応などである。いずれにしても今回のCOVID-19は、社会や産業のあり方まで変革してしまう可能性がある。当然、今回の騒ぎを克服した後には、全く違う社会になっているであろう。しかし、その基盤にナノ構造ポリマーの科学技術が大きな地位を占めるのを確信している。

 本協会は、会員と企業会員の皆様の協力、貢献、積極的な提案をもとに、既存の学協会が出来ない様な産学官にとって貴重な行事を行えるところが魅力である。今後の積極的な参加、御支援、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

Author: xs498889